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「普通、お年玉で相手に好きになってもらおうと思ったら、まず、相手の好みの服を買うとか」
「貴方の好み、知りません」
「俺の好きな映画のチケットを買ってくるとか」
「どんな映画が好きなのか知りません」
「……お前、ほんとに俺に興味があるか?」
ははは、と小瑚奈は笑った。
賢人は駅の見えてきた窓の方を向き、
「なんだか壮大な罠にかかってるような気がしてきたぞ」
と呟いている。
「第一、俺のことをよく知らないのに、俺のなにを見て、不器用だとわかる」
ははは、そうですね、と賢人の後ろ頭を見ながら、小瑚奈は笑った。
「雨の日に猫でも拾ってたんじゃないですか?」
「昔の不良か。
早くしろ。
乗り遅れるじゃないか、降りるぞ」
と賢人は開いたドア側に居る小瑚奈を急かす。
なんだかんだで連れていってくれるようだった。
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