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駅のロータリーまで下りた小瑚奈は、バス停に向かおうとする賢人を振り返る。
「お急ぎなんでしょう? タクシーで行きましょう。
まだ、お金、あるでしょう?」
だが、賢人は物言いたげだ。
「あまり使うと、あとで私に返せないとか、お思いですか?
言ったじゃないですか。
返さなくていいですよって。
なに、三万円で貴方の心が買えるのなら、安いものです」
売ってねーっ、と賢人が叫ぶ。
「なんでもいいから、行きましょう」
とさっさとタクシー乗り場に行った。
空いていたので、すぐ開いたタクシーのドアのところから、振り返り、手招きをする。
「さあ、賢人さん。
お母様が待ってらっしゃいますよ」
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