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「そりゃあ、ぱっと見、お前のそのロクでもなさはわからないからな。
いいところのきちんと育てられたお嬢さんに見えるし、それに――」
それに? と訊いたが、賢人は黙る。
「……まあ、俺を現ナマで買おうとした女には見えないってことだよ」
と間を置き、言った賢人は、もう着くぞ、降りろ、と話をまとめた。
小瑚奈は病院のロータリーでタクシーを降りながら、なんで、距離空けて座ってんだ、という、さっきの賢人の言葉を思い出していた。
貴方も相当距離空けてましたけどね。
っていうか、緊張してるんですよ、私も、と思いながら、賢人の後をついて、大きな病院のエントランスを歩いた。
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