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「いや、そうなんですが。
友だちが怒られてるの見てて、怖かったっていうか」
と小瑚奈は苦笑いする。
「だが、まあ、助かったよ」
賢人はこちらを見ずに、そう言ってきた。
「久しぶりにお袋の顔も見られたし。
お前みたいな女を連れてったおかげで、ちょっと安心したようだしな」
「安心しましたかね?」
と真顔で問うと、賢人も眉をひそめ、
「……実は、余計に不安になってたりしてな」
と呟いていた。
病院の前の交差点。
信号で止まっているバスを見ながら、賢人が言ってきた。
「金は必ず返すからな」
「いいですよ。
今日、楽しかったですし。
お年玉、もうほとんど使っちゃって、三万しか残ってなかったですしね」
と言うと、賢人は、こちらを振り向き、訊いてきた。
「お年玉、全額いくらだったんだ?」
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