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小瑚奈は指折り数え、
「十万ですかね」
と言う。
「待て!
俺の価値、お前のお年玉の三分の一以下かっ」
いやあ、破格のお値段でしたね~と小瑚奈は笑いながら言った。
「でも、そういえば、帰りの新幹線代、足らなくないですか?
さっき往復で買いませんでしたよね」
実は、小瑚奈は気づいていたのだが、母親が危険な状態かと思い、焦っていた賢人は気づいてはいなかったのだ。
今、言うのも悪いかと思い、黙っていたのだが――。
「あ、バス来ましたよ、賢人さん」
さっきのバスがこちらに曲がってくるのが見えた。
「待てっ。
そうだよ。
足りないだろっ」
とようやく気づいたらしい賢人は叫ぶ。
「っていうか、乗れないんなら、そもそも、駅行く意味ねえしっ」
「じゃあ、歩いて帰りましょうか」
と笑う小瑚奈に、
「何処までだ~っ」
と賢人は頭を抱えていた。
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