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線路が横に見えてきた頃、小瑚奈は振り向き、賢人に訊いた。
「あ、そうだ。
猫、元気ですか?」
「……元気だよ」
「あっ、そうだ!
私、カード持ってましたっ」
「早く気づけっ。
この莫迦がっ」
やっぱり、もてあそんでやろうかっ、と叫ぶ賢人に、
「ええっ?
じゃあ、お金払ってくださいっ」
と小瑚奈は叫び返す。
「意味がわからんのだが……」
お前が俺を買ったんじゃないのかっ、と揉めながら、気持ちのいい潮風の吹く道を、日が暮れるまで、二人で歩いていった。
完
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