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「高校までは、くそまじめな優等生でピアスなどあけたこともなく。
あの人、かっこいいけど、暗いよねーとか言われながらも、周りの目にも気にならないくらい勉強して、有名大学に入ったけど、父親の会社が倒れ、父親は失踪。
母親は心労から入退院を繰り返して、入院費が嵩み、仕方なく、ホストとして働き始めたものの、職場に馴染めず。
卒業アルバムを持って来るお客さんがいたら、よく似た別人ですよ、と言って誤魔化している毎日かと思っていました」
「すごい妄想癖だな」
賢人は、小瑚奈の手にある三万円を見、
「それで、金のない哀れなホストに金を恵んでやろうかとでも思ったのか」
と言ってきた。
「いえいえ。
恵みはしませんよ」
とそんな賢人に、小瑚奈は笑顔で言う。
「世の中そんなに甘くないです」
「お前はお前でロクでもないな……」
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