日々死ぬ君を救いたいと思うのは傲慢でしょうか

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 「お前が、死ぬ夢を見たんだ。」  安癸あきは目を見開いて、それから噴出した。  「何それ不穏!」  ケタケタと腹を抱えて笑う彼女を見ながら俺は一緒になって笑えなかった。  「……私は、どうして死んだの?」  俺が笑っていないことに気が付いた彼女はようやく笑うのをやめて、それから取り繕ったような真面目な顔をして聞く。  「……お前は、自転車に乗っていた。夕方、坂を下りていく。」  「うん、へえ?」  「それでお前は、ブレーキが壊れてることに気が付いた。ブレーキのかからない自転車は加速して、それから突き当りのガードレールを乗り越えて、崖の下へ落ちて行った。」  「……坂道って、鹿ノ子神社に行く時に通る、狭くて急な坂のこと?」  「ああ、あの坂。」  「でも私、学校の帰り道にあそこ通らないよ?」  「……坂の先、海だろ。お前なら『冬の海って乙だよね!』とか言い出した急にそっちの道へ行ってもおかしくないだろ。」   また安癸は笑う。少なくともある程度身に覚えがあるだろう。  「んーははは、まあ無きにしもあらずかもねえ。それで?こうして学校帰りの私を引き留めて。自転車屋さんでメンテナンスしてもらってるってこと?」  「……そうだ。」  さっきよりも大きな声で、心底愉快そうに高らかに安癸は笑った。能天気さにイラついたのと、こいつに対して懇切丁寧に説明した自分が気恥ずかしくて、無防備な脇腹を掴んでやった。セーラー服の隙間から黒いアンダーが見えた。  「ぎゃんっ!セ、セクハラだ……次は法廷で会いましょう……、」  「お前のぜい肉掴んだところで楽しくもなんともないけどな。」  「悪びれもせず人の気にしているところを貴様ァ……、」  呻きながら語彙力の足りない呪詛を吐き散らしている安癸を後目に、自転車のメンテナンスを終えたと店員のところへと行った。話を聞けばやはりブレーキは壊れかけていたらしい。  「うわ、本当にブレーキ壊れてたんだ。しかもタイミングよく両輪。」  「俺の言うこと聞いてよかっただろ。」  「予知夢とか……キモチワルッ!」  「言うことに欠いてそれかお前……、」  「はいはい、ありがとうございますぅ、感謝してますぅ。」  「心がこもってないな。」
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