日々死ぬ君を救いたいと思うのは傲慢でしょうか

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 世界が彼女を殺そうとする。  始めは、ほんの些細なことだった。そしてその些細なことが、終わらない葛藤の始まりだった。  小学校6年の冬だった。その日の夜は年一番の雪が降った日で、夕方になっても雪の解けない帰り道を歩いていた。人に踏み荒らされた夕方の道は茶色く汚れていたけれど、端の方に求められた雪は白いままだった。俺の少し前を、安癸が歩いていた。魔が差したのだ。いや素直に遊ぼうといえなかったせいかもしれない。俺は端の方に固まっていた白い雪をまとめて雪玉を作った。素手で握ったそれは感覚がなくなるほど冷たく、握りしめるようしたせいでとても硬くなっていた。赤いランドセルに向けて投げたつもりだった雪玉は何も気が付いていない安癸の後頭部にクリーンヒットした。もちろん、握って作った雪玉が、簡単に砕けるほどヤワなつくりはしていない。  「いった!?何!?ってあつし!!いきなり何してくれてんの!?」  「出来心で。」  「にやにや笑いながら言うな!」  想像通り、振り向いて起こる安癸は俺に向かって走ってきた。  そしてその瞬間、ついさっきまで安癸のいた場所にトラックが突っ込んできた。  激しいブレーキ音、車体がブロック塀にぶつかる衝撃、響く轟音、飛び散る雪。  俺が言葉を失って、安癸も怒りなど忘れてしまった。  次第に大人たちが集まってきて、俺と安癸はそそくさとその場を立ち去った。  二人で一緒に帰ったけど、一言も言葉を交わさなかった。  俺が雪玉をぶつけなければ、安癸はきっとトラックに押しつぶされていた。  俺も安癸も、何も言わなかった。けれど俺たちは、俺はきっと一生この日のことを忘れないだろうと予感していた。  その日の夜、安癸が死ぬ夢を見た。
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