堀炬燵

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今日は仕事納め。 雪がしんしんと降る中、皆で並んでそこへと向かう。 会社の忘年会。 今年は近所の居酒屋さん。 堀炬燵に並ぶ十八人分のお皿達。 私の右隣にはあなたが座ってきた。 私の……想い人。 小さく灯った緊張を悟られないようにと、私は左の方へ顔を向ける。 各々に飲み物を決めて会が始まった。 先程から、酔うに酔えない。 五杯目のカクテルを頼む。 触れるか触れないかの距離に右半身だけが緊張する。 それに気付かれないようにと私は右には一切顔を向けずに左隣の佐藤くんとばかり楽しく話す。 幸い後輩の彼は普段から話好きでネタは事欠かない。 仕事の話や趣味の話、佐藤くんの彼女へのノロケ話などで盛り上がる。 デザートが出されて、その会も終わるまで後僅かとなった。 私が右側を向くことも無く、それは静かに終わろうとしている。 きっと……。 こんなに近い距離なんて、これが最後。 名残惜しい。 そう思ってしまう。 でも、この想いを聡い彼に気付かれる訳にはいかない。 だから、この席から早く離れてしまいたいのもまた事実。 モテる彼に想いを伝える予定など無い。 これまでも、これからも。 ただ見て癒されるだけの距離。 それが一番、私に合ってる。 早くこの会が終わって欲しい。 気持ちが溢れだしてしまう、その前に。
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