公園で

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『お買い物に行く時にはここのタンスの引き出しを開けてこのお財布を持って行ってください』 僕がここに来てすぐに十時(ととき)さんはそうおっしゃられてお財布の隠し場所を教えてくださった。 それがなんだか僕は嬉しかった。 僕は今、十歳だけど学校には行っていなくて一緒に暮らしている十時(ととき)さんは僕のお父さんでもお兄さんでもない。 なのに十時(ととき)さんは僕にお洋服やお食事や立派なお部屋をも与えてくださっている。 もちろんタダではないけれど。 僕は『現状(いま)から逃げる』ことを望んでいた。 僕にはお父さんが居なくてお母さんは僕のことを・・・。 「紗江子(さえこ)さん・・・どうしているかな? ご飯・・・ちゃんと食べられているかな? お掃除はちゃんとされているかな? あの人に酷いこと・・・されていないかな?」 そんなことを思うとじんわりと僕の目の前は滲んでぼやけてしまった。
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