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公園で
今朝早くに十時さんは出掛けられた。
お仕事の時にいつも着られる真っ黒なお着物を着られて・・・。
僕は十時さんのお背中が見えなくなるまで門の前で十時さんをお見送りして、十時さんの広いお宅の母屋と離れのお掃除へと取り掛かった。
お掃除をしてお洗濯をしてお花のお水を替えた頃、お昼のサイレンが鳴った。
僕は悴んだ手を擦り合わせながらキッチンへと向かって歩いていたけれど、すぐに歩くのをやめた。
買い物に行かないと何もなかったのを思い出したからだ。
「・・・お掃除の前にお買い物に行かないといけなかったの・・・忘れてた」
僕はそんなことを呟いて今歩いて来たばかりの寒い廊下を戻って母屋で一番小さなお部屋の中へと入り、そのお部屋に置かれている三つのタンスのうちの一つの引き出しを開けて、その中に仕舞われている十時さんのお着物の下を探ってそこから隠されていたお財布を引き出した。
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