第1章

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 近所のホームセンターの駐車場に、新聞や雑誌、段ボール用のリサイクルボックスが置かれている。  俺も、この一週間ばかりでまとめておいた雑誌類を、休日を待って置きに行ったのだが、ボックスの前で一人の男性が必死に荷物を取り出している現場に遭遇した。  見たところ、リサイクル品を引き取りに来た業者ではないようだ。  捨てる筈のなかった品を、家族などに間違って捨てられてしまったのだろうか。  様子があまりに必死だったのでなんとなく同情心が湧き、俺は男性に倣ってボックスから雑誌の束を取り出した。 「出すだけ出しますから、目当ての品が見つかったら教えて下さい」  そう告げる俺に男性は深々と頭を下げ、そこから俺達は黙々と雑誌探しに没頭した。  俺がボックスから出した雑誌類を、男性が検分してまたボックスに戻す。そんな作業をどれくらい続けていただろう。  ふいに男性が声を上げ、振り返ると、相手が一冊の雑誌を嬉しそうに抱えている姿が目に入った。 「その本に、何か特別な思い入れがあるんですか?」  ボックス周りの雑誌類を片づけながら訪ねると、男性はそっと首を横に振った。 「いえ、本じゃないんです。必要だったのは、本に挟んだコレでして」  言いながら、男性は雑誌に挟まれていた封筒を取り出した。  おそらく、へそくりを隠しておいたら本ごと捨てられてしまったのだろう。 「業者に雑誌が引き取られてしまう前に見つかってよかったですね」 「ええ。本当によかった。これで私は、私の死が自殺でなかったことを証明できる。あいつらを裁いてもらえる…」  そのつぶやきと共に男性の姿は消えた。手にしていた雑誌と封筒が地面に落ちる。  状況を瞬間的には飲み込めず、反射でそれらを拾い上げた俺の意識に、どこからか『頼みます』という声が聞こえた。  えっと…コレ、警察に届ける、とかでいいのかな? 探す男…完
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