コタツノツタコ

5/6
前へ
/6ページ
次へ
 まず彼は山を一つ買った。  そして、その頂上にツタコの為の墓を建てた。  日本屈指の石工に彫らせた、生前と何も変わらぬツタコの姿を墓石とし、その下にツタコの亡骸を収めた特注の木棺を埋めた。  山は二十四時間、厳重な警備態勢が敷かれ、ツタコに近づく不届き物を許さなかった。  そして彼は一通の遺言状を残した。 「私が死んだときには、ツタコと同じ墓に埋めたまえ。できれば、ツタコの中に納めて欲しい二人の姿が長くとどめられるように、出来ればこの体をミイラにしたまえ」  親しい友人に託されたこの願いは、やがてかなえられることになる。  死んだ彼の体はひそかに防腐措置が取られ、山の上の墓へと運ばれたのだ。  どこかの山の上で、通とツタコは今も静かに眠っている。  ツタコの中で通は横たわっているのだ。  その肌は限りなくカサカサだが、その顔は幸せに満ち溢れているという。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加