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ガチャ
「ただいまー」
誰もいない部屋に自分の声が響く。
そう、俺はアパートで一人暮らしをしているのだ。
幼い頃に両親が交通事故で他界し、親戚の家に預けられ、本当の家族同然に過ごしていたが、あまりお世話になるのも気が引けたので、一人暮らしを始めた。バイトとの両立は大変だが、まあまぁ、楽しいし。
さてと。
最初にこたつの電源を入れる。
「ふぃ~」
やべ、変な声が出た。
「やっぱりこたつは最高だよね~」
「ええ、そうですね。あ、はい、蜜柑です。どうぞ」
「お!こたつに蜜柑とは……。キミもなかなか風情あるじゃないか」
「そうですか?………って、誰だよ!」
そのまま流れに流されるところだった。
こたつから出て、警戒する。
前髪が目にかかるかかからないかくらい長く、後ろも長めの髪形をしている、紫がかった白髪に桜色の目、愛嬌のある顔をしていて、着物も、髪と目に合わせた色のものを着ている────少年。
「あははー。別に怪しい者じゃないよ」
ニコリと笑いながら言われた。
「怪しい者だろ。勝手に人のこた──じゃなくて、部屋に入ってるやつは」
「言い直したね」
「してない」
気のせいだ。
「と、いうか、今さら警戒しても遅いでしょ。最初からいたんですけど」
くっ…………。
痛いところをつきやがって………。
「まず、部屋に入ってきた時点で気づくべきだよ。キミ、危機管理能力低すぎ」
「すいません……」
「しかも、この寒い時期だと言うのに、手洗いうがいもしないし………。風邪引くよ?…とりあえず、手洗いうがいしてきてよ。ボクに風邪うつさないでよね」
「…………いってきます」
なんで、勝手に人の部屋に入ってきた不審者の言うことを聞かないといけないんだ……。
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