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「ちょっとだけ寝不足ぎみかなあ・・・・・・」  ハハッと希が力なく笑うと、武居さんはスカートのポケットから一枚の紙を取り出した。 「ん? 何これ。Renatus・・・・・・?」  招待券のようなものを差し出されて、希は訝りながら紙の裏側を見る。 「relaxation salon・・・・・・あ、マッサージのことか。何、武居さんマッサージにいくの?」  希が返そうとすると、武居さんはなぜか苦痛を堪えるような顔をして、受け取ろうとはしない。 「・・・・・・これ、いま話題の店なんですよ。完全予約制で、なかなか予約がとれないって」 「うん?」 「イギリス帰りのマッサージ師がゴッドハンドで、うっとりするぐらいに気持ちがいいって。施術されて数分でぐっすり眠っちゃうらしいんですよ」 「それが・・・・・・?」  話がどこへたどり着くかわからず、希は困惑する。 「ずっといきたいと思っていて、ようやく予約がとれたんですが、涙を飲んで柏木さんに譲ります」 「ええっ! いいよ、そんな! せっかく予約がとれたなら武居さんがいきなよ!」  希自身は正直その類にはまったく興味がない。高い金を払ってわざわざ他人からマッサージを受けるなんて、眉唾ものとまではいわないが、物好きだなあくらいには思っている。とたんに手の中の紙が面倒なものに思えて、希は武居さんに返そうとするが、彼女は頑として受け取ろうとはしなかった。 「いいんです。すごく楽しみにしてたんですが、今回は諦めます。その代わり柏木さん、後でどんなだったかちゃんと話を聞かせてくださいね。本当に予約がなかなかとれないんですから、無駄にするようなもったいないことしないでくださいね」 「えええ~~っ」  よく見れば、紙には優待券と記載されている。 「あれ、招待券じゃないんだ」
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