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「ええ。オイルを使いますので。それでは失礼いたします」  いちいち驚く希をバカにするようすもなく、女性はにっこりと微笑んで部屋を出ていった。  希は呆然とその場に立ち尽くした。 「マジか・・・・・・」  希はハッとなった。さっきの女性は時間を見計らって部屋に戻ってくるという。すぐにシャワーを浴びなければ、また困ったことになってしまうだろう。  おたおたと着ている服を脱いで、シャワーブースに入る。これまで一度も使ったことのないような高級な薫りのするボディソープを使って、軽く汗を洗い流した。紺色の紙パンツを穿いた瞬間、なんとも情けない思いがした。けれど、言われたとおり施術台の上に横たわると、もうどうにでもなれという開き直った気持ちになった。  しばらくして、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。 「入ってもよろしいですか?」  あれ?  それは明らかに男の声だった。てっきりさっきの女性が戻ってくると思っていた希は、驚きつつも、「は、はいっ」と答えた。 「失礼いたします」  男が入ってきた瞬間、目が合って互いにしばし固まる。それは、先日ゲイバーで会った男だった。 「あ、あんた・・・・・・っ!」  男も希がその場にいるのは予想外だったのだろう。その目が大きく見開かれる。しかし、男はさすがにプロだった。すぐに気を取り直すと、明らかに接客用だとわかる笑みを顔に貼りつけた。 「担当させていただきます蒲生(がもう)と申します。柏木さま、本日はどうぞよろしくお願いいたします」  希はぱくぱくと口を開閉した。驚きすぎて言葉もない。
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