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「あ~、マジ疲れた・・・・・・」
月末にかけて小さなミスが連続して発覚したため、無事に解決の見通しが立つころには、希の部署では皆疲労困憊していた。
「や~、お疲れ。皆よくがんばった。あしたは週末だから、このまま飲みにいくか?」
「ひょっとして部長の奢りですか?」
ちゃっかりした若手社員の言葉に部長が「仕方ねえなあ・・・・・・」と苦笑を漏らすと、皆現金にもどっと喜んだ。
「やったあ! 部長愛してる~」
「どこがいいかな。駅の反対側に新しい店がオープンしたんだった」
「おいおい、あまり高い店は止めてくれよ」
帰り支度をしていた希は、「柏木さんはどうしますか?」という武居さんの言葉に、「う~ん、正直帰ってすぐに寝たいから俺はいいかな」と答えた。
「なんだ、柏木いかないのか」
金井の声に、またなと言って会社を出る。
星が瞬く濃紺の空に、冴えた月が輝いていた。
「うぅ~、寒ぃ~っ」
身体を小さく縮めるようにコートの襟元に埋め、寒いので自然早足になる。肩から背中にかけて、まるで亀の甲羅を背負っているように身体が重たかった。最近では肩こりのせいでかすかな頭痛にも悩まされていて、一晩寝れば疲れがなくなっていた学生のころとは大違いだ。
「歳かなあ・・・・・・」
希はカキコキと首を鳴らした。
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