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結論から言うと、あの日帰ったらちゃんと話し合おうと勢い込んでいた希は、結局明と話せなかった。それからも相変わらず明から避けられている。ここまでこじれてしまったことに、希は頭を抱えざるをえない。
「あ~、疲れたなあ・・・・・・。でも、問題が無事に解決できてほんとよかった・・・・・・」
疲労というものは、意識したとたんに増す気がするのはなぜだろう。思い出すのは、あの日Renatusで受けた夢のようなマッサージだった。身体の芯からほぐれるような、ふわふわと浮いた感じ。まるで天国にいるみたいなうっとりする幸福感。マッサージを受けた後は、新品の身体に生まれ変わったみたいだった。
「また受けたいなあ・・・・・・」
ぽつりと呟いたとたん、居ても立ってもいられない気持ちになる。いまこの瞬間、疲れた身体をほぐしてほしい。けれどさすがに何事もなかったふりをして、奎吾の店へ顔を出すだけの図太さは希にはなかった。
そうだ、別にあいつの店じゃなくてもいい。マッサージの店なんて、ほかにいくらでもある。
そうと決まったら、気持ちがふっと楽になった。希はスマホで、近くのマッサージサロンを検索し始めた。
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