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 駅前のビデオ屋で海外ドラマのDVDを借りて、スーパーへ寄った。明の好物である餃子を作ってやろうと、豚挽き肉とニラを手に取り、ついでにハーゲンダッツのアイスクリームもカゴに入れて、火にかけてシャカシャカ振るポップコーンも買った。  今夜はビデオざんまいだ。  わくわくしながらバスを降りて、家路を急ぐ。 「明ただいま~」  三和土に見慣れないスニーカーがあり、希はあれっと思った。明の友だちでも遊びにきているのだろうか。 「誰かきてるのか? 明ー?」  家の中はしんとしていて、物音ひとつしない。聞こえなかったのだろうかと首をひねりながらリビングの横を素通りして、明の部屋がある二階へいこうとしたときのことだ。誰もいないはずのリビングから、どすんと重たいものが落ちる音がして、続けて「ひゃっ」と悲鳴のような声が聞こえてきた。 「明どうした!? 大丈夫か!?」  部屋に飛び込んだ希が目にしたものは、ソファから転がり落ちたと思われる明と見知らぬ男の姿だった。二人ともなぜか服装が乱れている。 「あ、あ、明・・・・・・?」 「のぞちゃん出ていってよー!」  目をぱちくりさせる希は、真っ赤な顔で叫ぶ明の声で、慌てて部屋を出た。  身支度を整えた彼らと、希が再び顔を合わせたのは、それから十分後のこと。一学年先輩の男とつき合っていると弟の口から聞かされて、いったい誰が驚かずにいられようか。 「つ、つき合っているって、いったいどういう意味だ?」  泡を食って訊ねれば、明はうっすらと頬を染め、「どういうも何も、のぞちゃんの見たとおりだよ」などと言う。  お、俺の弟はオカマだったのか!?  希はぱくぱくと口を開閉させた。驚きすぎて、頭が理解することを拒んでいる。
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