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 目の前に、知らない男の寝顔がある。睫毛は長く、顔立ちはかなり整っている部類に入る。目を開けたらさぞや男前度は増すことだろう。男は希にじっと見られていることにも気づかず、健やかな寝息をたてている。それなのに希は、なぜ自分がこんな状況に陥っているのか、さっぱりわからないのだ。  希はおそるおそる毛布を捲り上げた。そうして自分が下着以外何も身につけていないことを確かめると、そっと毛布を元の位置へ戻した。  一体全体何がどうしたら、こういうことになるのだろう。  窓の外ではチュンチュンと雀の平和な鳴き声が聞こえてくる。そのとき、男の睫毛がかすかに震え、その目が開いた。起きたてで、ややぼんやりとしていた男の瞳の焦点が合ったとき、希はどきっとした。次の瞬間、男はふぁあと大きな欠伸をした。それから立ち上がると、冷蔵庫から水のペットボトルを出して、直接口をつけた。男が水を飲むたびに、しなやかで美しい身体のラインが穏やかに隆起する。なぜかそれ以上は見ていられず、希は視線をそらした。  まず一番に確かめたいことは、夕べ何があったかだ。 「あ、あの、俺・・・・・・っ!」 「具合は」  ・・・・・・具合?  問われている意味がわからず、希は首をかしげる。 「気持ち悪いとか、頭痛がするとか何かないのか」  夕べの記憶はすっぽりと抜けているが、特に思い当たるような症状は何も出ていない。希が首を振ると、男は顔をしかめた。 「・・・・・・あんた当分酒は飲まないほうがいいよ」  それってどういう・・・・・・?
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