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「いやー佐田と一緒にいた森川さん、結構鋭いこと言ってたから僕が焦ったよ」 「え。鋭いことって…?」 「『さっきの綺麗な男の子、八奈見くんとどういう関係?』って」  聞きようによっては、確かに含みがある。実際あの時、八奈見の過去の恋愛話になった途端、奇妙な態度で去っていってしまったのだから、怪しまれても仕方ないのかもしれないが。 「八奈見が学生を雇うなんておかしいって思ったんだろうね。詳細は説明しなかったけど、夏芽くんが一時お金に困ってたから協力してあげてただけって言っておいたよ」 「そうですか…」 「ま、そこまで深く考えないでもいいと思うよ。彼女は別に今八奈見と関係もないし、誰かに吹聴するってこともないだろうし」 「でも佐田のお兄さんとは同じ会社ですし。お兄さんは何て思ってるんだろ」 「佐田? あいつはなーんにも考えてないって。もちろん噂を広めるような口の軽いやつでもないし」  それはわかっている。人の良さそうな性格だから、そういうことには無頓着だろうということも。
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