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「そうなんですか、大変ですね。ゆっくりしていってください」  夏芽も笑顔を返し、フロアを出た。  しかし早速厨房で同じゼミのバイトの女の子、亜沙美に早速声をかけられた。 「どうしたの? クレーム?」 「お客さんに絡まれた。変な人もいるから、女の子は特に気をつけたほうがいいかも」 「そっか、大変だったね。また来るかもしれないし、一応店長に報告しといたほうがいいよ」  そうだね、と返しつつ、店長に詳細を説明するのがはばかられる。男に可愛いと言い寄られました、なんて。恥以外の何物でもない。 「でもあのイケメンの人が助けてくれたんだよね? カッコ良かったよね~! また来てくれるかなあ」  女子のチェックは流石に高速だ。目がキラキラと輝きだしたので、イケメンの威力って本当に凄いんだな、と改めて実感させられる。ああいう人間がいるから夏芽のような棒っきれは女子から異性として見られないのだと思う。 「うん、感じのいい人だったよ。また来てくれるといいね」 「彼女いるかな? 今度来てくれたら訊いてくれない?」 「え、俺が?」 「女から訊くのって勇気いるのよ」 「わかった。チャンスがあれば訊いてみる」 「あ、ねえ、店員がお客さんに連絡先渡すとかってありかな?」  何という積極性。一度見かけただけでもうそれをしてしまうのか。相手がどんな人かまだよくわからない状態で。  いいんじゃないかな、と夏芽は圧倒されながら冷や汗を隠して返した。
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