掘りごたつ

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掘りごたつ

「じいちゃんちのコタツ、あったかいね」 「うちのは掘りごたつだからな」  台所に立っていたら、居間にいる父と息子の会話が聞こえた。  久々に戻った実家は、狭いが昔ながらの日本式家屋で、自宅にはない掘りごたつが備えられている。  息子はそこに入り込み、しきりに温かい温かいと連発し、父も孫のそんな姿にご満悦のようだ。  お茶を淹れ、私もこたつに入り込む。足元から感じるなんとも懐かしい暖かさは、ここから出たいという意思を奪う程だ。  でも、よそでコタツに入ったこともあるけれど、実際実家のこたつは暖かい。  掘りごたつで暖かい空気が逃げにくいのかとも思うけれど、それ以上に暖かいさを感じる気がする。 「お母さん。うちもこたつ買おうよ。じいちゃんトコのと同じ奴」 「無理言わないでよ。掘りごたつなんか置くスペースないわ」 「同じモンは無理だな。なにせじいちゃんちのこたつは燃料が違うからな」  父にまでダメ出しをされ、息子は不服そうに唇を尖らせた。でも私は、息子がこたつを諦めてくれそうなことよりも、今の乳の発言が気になった。  燃料ってどういうこと?  掘りごたつだけど、実家のこれは電気で暖まる枝葉ね? なのに燃料って…。  それを考えたら、ふと、もう一つ気になることが浮かんだ。  息子がこたつに入る時、一緒に潜り込んだ実家の飼い猫が中にいない。  てっきり外へ出て行ったものだと思ってたけど、あの子はかなりの寒がりで、自分からこたつを離れるなんておかしいくらい。  そういえば、さっき見かけた時、模様も何もかもか一緒だけど、一瞬違う猫に見えた気がしたけど…燃料って…まさかね。 掘りごたつ…完
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