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「お兄ちゃん」
笑いを含んだ明るい声に呼ばれて、座ったままで振り向けば、頭上に何かを落とされた。
「ふふふっ、私とおそろい」
自分を指さす妹の頭には、輪になった色とりどりの野花が載っかっている。
「似合うわけないだろ」
「うん、だからだよ」
憎たらしい返しをした妹は、笑って逃げ出した。
こんな風に、いたずら好きで困らせてばかりの妹だが、それがこの兄妹の常だった。
「おーい。何、のんきに寝転がってるんだよ」
原っぱの向こうから呼びかけられて首を伸ばせば、今度は親友が手を拡声器にしてやってくるところだった。
「こんなところにいたのか」
「こんなところで悪かったわね」
いつの間にか戻ってきた妹が、心外だと、むっすりしながら言い返す。
「悪かった、場所は少しも悪くない。でも、こんな日にのんびり日向ぼっこなんて、さすがは優等生だな」
「それは嫌味か」
「違うって。素直に、お前はすごいって、褒めてんだよ」
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