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浮気の発覚
〈ダークルーム〉
薄暗いセーフライトの点いた暗室。オメガの旧式伸ばし機にモノクロネガをセットして光を透すと、白いイーゼルに裸の女性のバストが映し出された。
西島洋介は拡大率とピント調整し、真剣な表情で盗み撮りされた男女のベッドシーンをプリントする。
しかし、すぐに驚愕の顔で目を細めた。
「ウソー!」
反転された映像だったが、顔の映ったカットを見て自分の妻だと知ったのだ。
「これ、佳代子じゃん?」
『浮気現場の妻の写真をプリントするなんて……』
その数十分前、横浜にある[ダークルーム]というレンタル暗室に常連客の探偵・泉田憲一が現れ、受付で店長の西島洋介が対応している。ロングの天然パーマでメガネをかけているが、歳の割には童顔で若々しく見えた。
「また、浮気現場の写真ですか?」
[CONTAX T3]カメラから出したモノクロのパトローネを渡され、泉田に声を掛ける。
「ああ、今回はかなりリアルに撮れたんで洋介さんにプリントを頼みたい」
「今どきアナログカメラで、しかもモノクロで撮る探偵なんているんですか?」
「いや、ここで講習受けてから芸術的な写真撮りたくてさ」
「不倫現場に芸術っていりますかね?」
「泉田さん。センスありますもん。その気持ち分かりますよ」
店員の佐藤理恵にそう言われた泉田憲一は近所にある探偵事務所で働いていて、このダークルームによく顔を出し、すっかり顔馴染みになっていた。
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