妖精との再会

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 ポケットに入れた携帯電話の呼び出し音が煩わしくて、仕方なく手に取って耳に当てるとダークルームの店員、佐藤理恵が早口で捲し立てた。 「店長。何やってるんですか?早く戻って来て下さい。私ひとりでは対応できません。何があったか知らないけど。仕事はちゃんとしなきゃダメでしょ?」 「しかし……女性ってのはアレですか?」 「アレ……?」 「セックスに飢え、心の奥底に欲望を(たぎ)らせる色情狂なんですかね?満月の夜に変身して、ベッドで野獣と化すとか」 「はっ?洋介さん。何言ってるんですか?」 「ごめん。理恵ちゃん。とにかく僕にはもう何が何だか分かりません」  洋介は謝ってから携帯電話を海に放り投げ、大きなため息を吐き出し、一歩踏み出して柵に手を掛け、波間に揺れる影に視線を落としたが、背後から少女の声が聴こえて振り返る。 「ホントにそんなこと思ってる?」  菜野子は入り口で入場券を払う尚樹を置いて先に乗船し、階段を駆け上がって甲板の船首へ向かい、洋介が電話で話す声を聴き、数歩離れた位置から真剣な表情で反発した。 「あなたはそんなこと言う人間じゃない」
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