幻想的な写真

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 ダークルームはB1地下にあり、洋介と泉田がドアを開けて階段を上がり始めると、上にカラフルなファションの少女が立っているのが見えた。  赤いチェックのミニスカートに白いパンツが逆光で輝いて見え、一瞬、洋介の瞳にキラキラとした粉が振り撒いて映り踏み出した足を止める。  しかし少女はパンツが見えても気にする素振りもなく質問を投げ落とす。 「ダークルームってここ?」  水守菜野子はパンフレットを開いて、小さな胸を張って両足を少し開いて立っている。ショートカットで帽子を被り、ブルーとグリーンのシャツにミニリュックを背負って、背は低くスリムで21歳になっても子供に間違えられた。 「そ、そうだけど」  眩しそうに手を翳して洋介がそう応えると、「ありがと」と微笑んでスキップするように階段を降りて来て、すれ違う姿を追って振り返る。 『なんだろう?』  洋介はさっきまで暗室に居たせいか、その少女がキラキラと輝いて見えて首を傾げている。 『パンツだけじゃない。光の粉で輝いてる』  先に階段を上がった泉田が遅れて呆然としている洋介に声をかけた。 「洋介さん。どうかした?行こうよ」 「あっ、はい」  洋介は不思議そうに目をこすって階段を駆け上がり、通りで横に並ぶと泉田はカメラを持ってパンツが見えたことを笑って話した。 「シャッターチャンスだった。フィルム入ってたら撮ったんだが」 「泉田さん。変態ですか?」 「こんな商売してると変態にもなるさ。だから、芸術家に憧れるわけ」
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