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絵本の世界
数分後、森川尚樹が入口に現れて菜野子の姿を見つけると、ため息をついてゆっくりとロビーの方へ歩いて、後ろから店員の理恵に挨拶した。
「失礼します。そいつの知り合いです。あっ、彼女じゃないですよ」
スタジャンにジーンズのイケメンの若者は何故かそんな弁明まで理恵に話した。
「実はちょっと訳ありなんすよ」
理恵の横に立って耳元で囁き、理恵も不思議な感じがして菜野子を見ながらその若者に聞いた。
「そうなんですか?さっき、あの写真の場所で生まれたって言ってました。白神山地の山奥の森のはずなんだけどな」
「はい。実は東京生まれです。俺、幼馴染みなんで」
尚樹は小声でそう言って微笑み、理恵はそうなんですか?って感じで頷いている。
「ナオ。ほらっ、もっと近くで見てごらんよ。この森、最高でしょ?わたし、帰りたくなったよ」
菜野子は尚樹に振り返って手招き、キラキラした笑顔で森の写真を見つめている。その時、菜野子の心は過去の暖かい想い出に飛んでいた……。
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