45人が本棚に入れています
本棚に追加
過去の出来事
結局、むりやり尚樹もプリント体験コースを付き合わされ、理恵が尚樹と菜野子に暗室の伸ばし機の使い方を教えていると、受付にカメラを持った年配の客が現れ、その対応にも追われた。
「すいません。店長、外出してまして」
理恵が暗室を出ると、二人は言い争いながら伸ばし機の操作を始めた。
「ナオ。そうじゃないってば。ここでピント合わせるんだって」
「わかってるって。お前が邪魔してんだろ」
狭い暗室の中に二人で入った尚樹は、菜野子の明るさを身近に感じながら事故があった数日後の出来事を思い出した。
[セレモニー・ホール]
町田の自宅から車で数十分程行ったセレモニーホール。水守朝子の葬儀は家族葬となり、森川家の家族との知り合いが数人集まり、水守家は菜野子しか出席してない。
「えっ、菜野子を引き取る?」
「ああ、お母さんとも相談したんだが。あの子を引き取ろうと思う」
ひっそりとしたホールの片隅のテーブル席で、父和雄が真剣な表情をして息子の尚樹にそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!