妖精との再会

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「君は?」  洋介は振り返って、睨んでいる菜野子がダークルームの階段を上がる時すれ違った少女だと分かった。しかし、あの時のキラキラした光は見えずに苦笑いする。 「そうか。輝いてないけど、店に来た人ですね?」 「それはそっちの目が曇ってるからですよ」  菜野子は「輝いてない」の返答にもムカつき、この人間は妖精が見えたのに『心』を失ってしまったと悔しがる。 「そんなんじゃ、いい写真も撮れません。アレは偶然だったのですか?」 「いや、ほっといてくれ。君には関係ないから」 『なぜ自分はこの子に怒られている?』と洋介は首を傾げた。 「ありますよ。わたしはあの写真のファンなの。と言うことはあなたのファンでもあります」  菜野子は理恵から壁に飾ってある写真を撮った店長は外出していると聞き、やはりさっきすれ違った男性が西島洋介だと思い、戻るのを期待して待っていた。  尚樹が先に入った菜野子を探し、甲板で見つけて近寄り、言い争っている菜野子の横に並んで声を掛ける。 「菜野子。どうしたんだ?」 「この人間。死にそうです」 「えっ?おじさん。自殺する気?」  尚樹は船首に佇む男の暗い表情を読み取り、不安になって菜野子と洋介を二度見する。  洋介も『自殺』と言われて、『そうかもしれない』と船首の下の海面を覗き見て、考えもしなかったが自然と足が此処に向かわせたと思った。
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