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「天崎さん!?」
さっきまで克彦が座っていた席に、同期の外商事務員である天崎倫音が、真っ直ぐにこちらを向いて着席していた。
「ど、ど、どうして…」
『会社から遠い』
『うちの人間は誰も来ない』
『隠れ家的な店』
に、どうして彼女が!?
「私も、今日予約していたんです」
「え?」
「一人だからカウンター席にいたんです。知り合いがいるからと、お願いして相席にしてもらいました」
やっぱり無機質に、倫音は答えた。
「あの、あの…見た、よね…?」
「『見た』とは、三田課長のことですか?」
ダジャレ混じりの、どストレートな倫音の答えに、佳乃は口に含んだワインを盛大に吹いた。
赤でなく、白を頼んで良かった。
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