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翌朝、普段なら課内の誰よりも早く出社する佳乃は、遅刻ギリギリにやって来た。
二日酔いの頭が、ズキズキ痛む。
「おはよう、天崎さん」
「おはようございます」
先に席に着き、朝礼の始まりを待っていた倫音に声を掛ける。
「あの…私、ゆうべ、変なことを口走らなかった?」
「『変なこと』とは?」
「それは…」
周囲を伺いながら、小声になりかけた時、「おめでとうございまーす!」という歓声に佳乃の控えめな話し声は、かき消された。
「三田課長の奥様、5年ぶり、まさかの3人目ご懐妊!」
「えっ?」
口を開けたまま固まる佳乃のことなど目に入らない様子で、ニヤけた表情の克彦は、周囲から小突かれている。
「同期の婦人服部門の斎藤さんの奥さんと、たまたま産婦人科で会ったんですよね」
克彦の後輩営業員である畑山が、我がことのように嬉しそうに皆に報告している。
「ゆうべ、ウチの奴から急に『重大報告がある』って言われてさぁ…コレだよ」
「コレ」という発言と共に、克彦は右手でお腹を大きく描く仕草をして見せた。
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