1.ゲスの極み男。

13/14
前へ
/70ページ
次へ
昨日、ここで優しく佳乃を引き寄せた右手。 ゆうべ、佳乃の頭を優しく撫でた右手。 あの瞬間は、とても爽やかで格好良く見えた克彦が、急にオヤジ臭く見えた。 青ざめた顔色で荒い息づかいを始めた佳乃に、「ハゲ田」と皆から揶揄される部長の刷毛田(はけた)が声を掛けた。 「人見君?どうしたの?」 佳乃はブルブルっと肩を小刻みに震わせたかと思うと、その場を走り去った。 「人見君!?」 「部長。私たち、二日酔いで早退します」 「天崎君も?…って、二日酔い!?」 少ない髪の毛を逆立たせて目を丸くする刷毛田に構わず、倫音は佳乃を追いかけた。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

205人が本棚に入れています
本棚に追加