205人が本棚に入れています
本棚に追加
翌朝、佳乃は自室のベッドで目覚めた。
頭は、まだ重い。
枕元に置いたスマートフォンの画面を開くと、11時を過ぎていた。
「ズル休みしちゃった…」
会社には、ゆうべの内に連絡を入れていた。
昨日の今日で、克彦と顔を合わせて冷静でいられる自信がなかった。
部長の刷毛田にイヤミの一つでも言われるかと覚悟していたが、欠勤をあっさりと承諾してくれた上に「大丈夫?辛かったね。ゆっくり休んで」と心配までしてくれた。
どうやら、倫音から刷毛田部長に突発欠勤についての根回しをしてくれたらしい。
三田課長の名前は出なかったので、何か適当な理由を付けてくれたのだろう。
天崎倫音。
「復讐しましょう、ゲス男に」
ゲス男とは、佳乃の不倫相手である課長の三田克彦のことを指すのだろう。
奥さんとは不仲であるかのように装いながら、ちゃっかり3人目の子作りをしていた。
確かにゲスな男には間違いない。
けれど…
「あなたに、何が分かるというの?」
昨日も同じ台詞を吐いて、倫音に背を向けて帰った。
これまで、他人には全く興味のないような顔をして、課内唯一の同期である佳乃に対しても声を掛けることなどなかったのに。
ここにきて、何故こんなに構ってくるのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!