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ネイルサロン『Southern(サザン)』の扉の前に立つと、勢いよくドアが開き、スーツ姿の男が出てきた。
「ありがとうございました~!また、いらしてくださいねっ」
朗らかな朱里の声が響く。
対応から見て、男は常連のお客様には間違いないようだ。
「あら、佳乃ちゃん、いらっしゃい!」
電話とは違い、フランクな調子で佳乃をサロンへ迎え入れた。
「男性客も来るんですね」
ネイルケアは女性がするもの、という固定概念が覆されて、驚きつつ朱里に尋ねた。
「そうね~。美意識の高い方や、最近では、人前で手を見せてプレゼンすることの多い営業マンの男性も爪を磨きに来るわね」
ふ~ん…けれど、ネイルサロンに男性が出入りするのは違和感があるなぁと、珍しいものを見るように自分と入れ違いに出ていくスーツ姿の男性客を、朱里と共に佳乃も見送った。
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