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外商部事務所は、デパート本体とは別棟に存在するため、売り場の社員と出会うこともない。
無人の廊下を早足で歩いていると、背後から腕を捕まれた。
「きゃっ」
「佳乃」
男子トイレから出てきた克彦だった。
「話がある」
「離してください」
ダジャレのようなやり取りだとクスッと笑いそうになったところを、そのままトイレ脇にある資料室へ、力づくで引き込まれた
「なっ…」
何をするんですか、と声を上げかけた唇を、克彦の唇で塞がれた。
長いキスの後、ゆっくり余韻を残しつつ離れた佳乃は、上目遣いになりながら皮肉を込めて言った。
「3人目、おめでとうございます」
「違うんだ」
家庭内別居していると言いながら子どもを作っておいて、何が違うのかと可笑しさすら込み上げる。
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