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克彦は外回り中、部の責任者である刷毛田も会議でだ。その旨を伝えると、杉山はさらに声のボリュームを落とし、早口に拍車をかけた。
「え~、困ったな~。とにかく外商部の人間を呼んでこいっていうんです。人見さん、対応してくださらない?」
「え、それは…」
受話器の話口を押さえつつ背後の倫音にチラッと目をやる。
「どうぞ、行ってください。事務所の留守番は私がしていますから」
まるで後ろ頭にも目が付いているかのように、視線を感じ取った倫音は明瞭な口調で答えた。
「ありがとう、行ってくるね」
克彦のことを助けるな、と忠告をされたけれど、仕事に関しては別件ということだろうか。
そんなことを思いながら、佳乃は婦人ミセス売り場へと足を運んだ。
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