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同じ課の、たった二人の同い年の女子社員だというのに。
プライベートの話は疎か、仕事の会話も続いたことがない。
一緒にランチに行ったり、休日には同僚同士でショッピングに出掛けることもあるという他部署の女の子たちの話を、佳乃はいつも羨ましく思いながら聞いていた。
「彼氏、いません」
「好きな人も、いません」
これじゃあ、克彦との恋愛話など、とてもじゃないけどカミングアウトなんて出来るわけがない。
美人で、仕事も出来るのに。
天崎さんって、変わってる。
…と思ったけれど、これは胸の内にしまっておいた。
小さくため息をついて顔を上げると、資料の複製は、全て完了していた。
「あ、ありがとう、天崎さん。一緒に…」
三田課長に渡しましょう、と声を掛けるより早く、
「お昼、行ってきます」
滑舌のよい通る声だけ残して、倫音は作業室を去って行った。
時計の針は、きっかり12時を指していた。
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