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「あれ、思ったより早く出来てるね。ありがとう」
昼休憩に出掛けた倫音と入れ替わりに、克彦が事務所へ戻ってきた。
「天崎さんが、手伝ってくれて」
「天崎?ああ、愛想のない、中途採用の…」
顧客のお子様から掃除のおばちゃんまで、女性と見れば誰にでも優しい克彦が、倫音の名を耳にした途端に怪訝な顔をした。
「私と同い年だけど、大人っぽいし、キレイな人よね。仕事も早いし…」
「僕は、君の方が可愛いと思うけどね」
言葉尻を遮るように言いながら、正面から佳乃の腰に右手を回した。
「あの、他の人が…」
戸惑い、身をよじる佳乃を抱き寄せ、耳元で囁く。
「部長は出張、営業は全員外出中。事務員も佳乃以外は食事に出てるんだろ。昼休みが終わるまで、二人きりだよ」
ああ、私、愛されてる!
職場で名前を呼んでもらえたことに至上の幸せを感じながら、佳乃は克彦に身を預けた。
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