1.ゲスの極み男。

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19時5分。 「いつもの店」で、克彦は既に席に着いていた。 「遅くなって、ごめんなさい」 仕事は定時に終わっていたのだけれど。 昼間の社内での情事に舞い上がっていた佳乃は、久しぶりの外での逢瀬に気合いを入れるべく、美容院を経由して来たのだ。 「大丈夫、俺も今来たところ」 克彦の余裕の微笑みを正面から見た後、ウェイターに料理を寄越すように促す横顔をまじまじと眺めた。 かっこいい…! 昼間は大胆にも職場で接近してしまったけれど。 日頃は意識的に見つめないように心がけているので、余計に格好良さが増して見えた。 「何?」 優しい目で、克彦が尋ねる。 「人目を気にせずに課長の顔を見られて、嬉しいなって…」 「相変わらず、可愛いことを言うね」 佳乃の答えに満足したのか、克彦はアルコールが入る前から上機嫌になった。 「隠れ家的な店だし、浪越屋からは遠いしね。うちの人間はまず来ないよ。遠慮なく見て」 そう言うと、額と額がくっつきそうな位置まで顔を突き出してみせた。 かっっっこいい!! 店の雰囲気と、克彦の仕草に、佳乃は周囲が目に入らないくらい舞い上がっていた。
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