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19時5分。
「いつもの店」で、克彦は既に席に着いていた。
「遅くなって、ごめんなさい」
仕事は定時に終わっていたのだけれど。
昼間の社内での情事に舞い上がっていた佳乃は、久しぶりの外での逢瀬に気合いを入れるべく、美容院を経由して来たのだ。
「大丈夫、俺も今来たところ」
克彦の余裕の微笑みを正面から見た後、ウェイターに料理を寄越すように促す横顔をまじまじと眺めた。
かっこいい…!
昼間は大胆にも職場で接近してしまったけれど。
日頃は意識的に見つめないように心がけているので、余計に格好良さが増して見えた。
「何?」
優しい目で、克彦が尋ねる。
「人目を気にせずに課長の顔を見られて、嬉しいなって…」
「相変わらず、可愛いことを言うね」
佳乃の答えに満足したのか、克彦はアルコールが入る前から上機嫌になった。
「隠れ家的な店だし、浪越屋からは遠いしね。うちの人間はまず来ないよ。遠慮なく見て」
そう言うと、額と額がくっつきそうな位置まで顔を突き出してみせた。
かっっっこいい!!
店の雰囲気と、克彦の仕草に、佳乃は周囲が目に入らないくらい舞い上がっていた。
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