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理は東京都内の名門・W大学の経済学部に通う1年生だ。受験勉強はほとんどしなかったが、卓越した現代文の力と数学のセンスを十二分に発揮して現役で合格した。現在は大学付近のアパートに下宿をしている。
理はコタツに入ってうつ伏せになったまま一歩も出ずに黙々とコントローラーを操作する。
ーー喉が渇いたなぁ
理はコントローラーを一旦置いて右手を横に伸ばし、ペットボトルを引き寄せた。そしてそばに置いてあるコップにペットボトルから注いだ水を飲み干し、そのまま再びコントローラーを手に取った。
ーーお腹が空いたなぁ
理はコントローラーを一旦置いて左手を横に伸ばし、袋の中をガサゴソと漁った。そして中からカレーパンを取り出し、一口頬張った。そして再びコントローラーを手に取った。
ーーちょっと飽きてきたなぁ
理はコントローラーを一旦置いて左手をコタツの上に伸ばし、コタツの上に手のひらを這わせる。手のひらが何かに当たった。
ーーあった。
左手が手にしたのはテレビのリモコン。理はチャンネルを変える。変えたあとのチャンネルでは漫才をやっていた。理はリモコンをもとの位置に戻すと、しばらくその漫才に見入った。
漫才を見終わりゲームを再び始めた理。ところが、ここで強敵であるダークエルフに遭遇する。攻略法が分からないまま全滅を繰り返す理。
ーー攻略法、見てみるか
理はコントローラーを一旦置いて右手を斜め前に伸ばしてスマートフォンを手繰り寄せた。そして攻略法をネットで検索する。
ーーなるほど
理は再びゲームを始め、見事ダークエルフを打ち負かした。そして再びゲームの世界に没頭する。
壁の時計を見ると、すでに午前1時を過ぎている。どうやらいつの間にかクリスマスイヴに突入していたようだ。
ーーそろそろ寝るか
理は再びリモコンをコタツの上から取ると、テレビを消した。そして右手をコタツの上で動かしてもう一つのリモコンを取る。そして電気を消すと、うつ伏せのまま眠りについた。
結局理がコタツを出たのはトイレに行ったほんの数分だけ。他はずっとコタツに入りっぱなしでこの日1日を終えた。コタツを中心とした半径90センチの半円状に必要なものが全てあり、手を伸ばせば必要なものが全て手に届く。まさに至れり尽くせりである。
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