コタツ連邦共和国

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「フンッ、あなたたちのジョンへの気持ちって、その程度なのね。犬が怖いとか、交通費がどうのとか、くだらない。できない理由を探してるだけじゃない。ったく、ここにはヘナチョコ男子しかいないのかしら」 クロエが挑発すると、一番ヘナチョコのマイケルが後ずさりした。 「それなら言わせてもらうけど、クロエはジョンの住んでた家の場所、知ってるのかい?」 クロエがこの集まりに参加し始めたのは、つい最近のことだ。だから、ジョンの家に遊びに行ったことは一度もないはず。トーベはそう考えた。 「知ってるに決まってるでしょう?」 クロエの小鼻がひくひくと動いている。嘘をついてる証拠だ。それに気づいたフランシスがさらに追い詰める。 「じゃあ俺たちがいなくても、一人でジョンに会いに行けるよなぁ?」 「はぁ?女の子一人で行かせる気?信じられない。ヘナチョコどころか、サイテーよ。あなたたちは!」 クロエの顔が真っ赤になっていく。絵本に出てくるりんごのオバケみたいだ。 「本当はジョンの家の場所、知らないんだろ?教えてほしかったら土下座しろ」 ヒデキはフランシスといる時はすごく強気だ。女子相手でも容赦しない。 もういい!と捨て台詞を吐いて、クロエは公園から走り去っていった。ジョンの住んでいた家とは真逆の方向に。 「ま、遠いといっても、コタツの中じゃ、たかが知れてるしね。生きていればいつか会えるさ」 フランシスは、まるで外の世界を知っているかのような口ぶりだった。トーベは思わず尋ねる。 「ねぇ、外の世界ってどんなところ?」 「俺にもわからないよ。ただ、すっごーーーーーっく広いってことしか。あとは、昼と夜があるんだって」 ヒルトヨルってなに?トーベが聞くと、フランシスが事も無げに話してくれた。 「昼は、太陽が昇っている時間。夜は、太陽が沈んで月が出ている時間のことだって、本で読んだよ」 「太陽が沈むの!?どこに?」 「正確には、沈んでいるように見えるだけなんだけどね。太陽が地平線の向こうへと沈む一瞬、空が黄金色に輝くんだって」 外には、太陽だけじゃなく、ツキもあるのか。トーベは、黄金色の空がどんなものなのか、一度見てみたいと思った。
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