コタツ連邦共和国

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 翌日、今度はクロエがいなくなった。先生は、クロエは家の事情で転校したと言った。ジョンにクロエ。立て続けに引っ越しなんて、どう考えてもおかしい。昨日のクロエは、ジョンに会いたがっていたけれど、まさかジョンのあとを追ったのだろうか。 「先生は何か隠してる!」 放課後の公園で、マイケルは柄にもなく興奮していた。 「先生だけじゃない。親たちも何か隠してるよ」 そんな、まさか。トーベは、パパとママが自分に隠し事をしてるなんて、想像もできなかった。フランシスの家庭は少しフクザツだと、ウワサで聞いたことがある。だから先生だけでなく、親のことも疑っているのかもしれない。 「トーベのお父さん、人工太陽の管理局で働いてるんだろう?何か聞いてないのか?」 トーベの家では、仕事の話はしないことにしている。家庭に仕事を持ち込みたくないパパを気遣ってのことだ。 「うーん、何も聞いてないけど、最近になって、帰りが遅くなったよ」 フランシスは、腕を組んで何かを考えている様子だった。ヒデキもそれを真似てはいるけれど、多分何も考えてない。 「トーベ、お父さんに、人工太陽のことを聞き出してみてほしいんだけど、できるかな?」 仕事の話は禁止されているけれど、フランシスの頼みなら聞いてあげたいと思った。  公園から帰宅すると、パパがいた。信じられない。こんな早い時間に帰ってくるなんて。トーベは嬉しくなってパパに抱きついた。作業服のにおいを嗅ぐとホッとする。ふとパパの顔を見上げると、泣いていた。隣でママも泣いている。二人の泣き顔を見たのは初めてだった。 「どうして泣いてるの?」 トーベが尋ねても、二人は何も答えてくれない。いつも優しいパパとママが悲しんでいる。ただ事ではないと思った。 ママが黙ってトーベを抱きしめる。もう六歳なのに。身長だってクラスで一番高いのに。ちょっと恥ずかしいけれど、久しぶりのハグは、温かかった。 「トーベ、赤紙が来たんだ。だから、パパたちとはもうお別れしなくちゃならない」 自分の耳を疑った。お別れ?アカガミ?パパ、なにいってるの? 「トーベはね、これからコタツの外に行くの。お友達と一緒に」 ママが声を震わせながらそう言ったけれど、トーベには理解できなかった。頭がくらくらする。ママお腹すいたよ。早くご飯食べたいよ。今日はシチューの日だよねーー 「お願いね」 ママの最後の言葉で、トーベの視界は暗転した。
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