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第二章
次の日、クシビは人の多い街の裏通り……。表の人通りとは別に、一つ裏道の狭い路地に、朝早くから来ていた。
服装は目立たないようにし、顔をアイグラスで隠している。
「………」
辺りを見渡さないようにしながら、じっとそこに立っている。不審な動きを気取られないように気を付けていた。
「元気そうね」
そう声を掛けられると、そちらの方を振り返るクシビ。
「手掛かりは見つかったのか?」
「ええ」
答えたのは、豪華な服装に身を包んだ女性だった。希少な花の模様が描かれた薄い服装を着こなし、肩まで伸びた黒髪の下で薄い笑みを浮かべている。
とても高地位の人間であることは、周りから見てもわかるだろう。それだけで裏の世界の人間には知らしめる事ができるほどに……。
「これよ」
「感謝する」
クシビが渡された資料に目を通していく。その様子に、情報屋の女は呆れるような目を向けた。
「あなたも懲りないわねえ。こんな事続けてたら、いつかどこかでぽっきり折れるわよ?」
「………」
そんな言葉を言われるが、クシビは渡された資料をじっと眺めている。
「勿体ないわねえ、その魔術。あなたほどの腕があれば、どこの所属にいてもやっていけるはずなのに」
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