3人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
奥の間から姿を現す少女――ヒマリがこちらを覗いて尋ねてくる。
「大丈夫だ。ちゃんと倒した術士の証明を貰ってある。倒した術士の分は、情報屋の契約によって金額と共に補充されている」
クシビの言葉に、豪華絢爛な着物に身を包んでいるヒマリは、いかにもな口調で契約内容を確認していた。長く整った髪が蝋燭の明かりに照らされて揺らぐ。
「ふうむ。流石は情報屋じゃのう。支払いもバッチリじゃ。お主の手柄も、なかなかに良いぞ」
「それはどうも……」
白々しい言葉に対し、無表情で返事をするクシビ。
「うむ。これからも精進するが良いぞ。さて、これからの任務も色々控えておるが、まずは休むがよかろう」
「そうさせてもらう……」
クシビが返事をすると、そのまま部屋を後にするのだった。
「クシビ様、お疲れさまでございます。治癒薬の用意ができております。こちらへどうぞ」
クシビが息を吐いた。
複数の蝋燭が灯された部屋に居座っているヒマリは――そのままクシビを見送っていた。
「また旧友とやらに会ったのか?」
「………。」
クシビは、その言葉に何も返さない。
「まあ、気にせず任務を続けてくれれば良いがな。それで、手掛かりはなかったのか?」
「あまりめぼしい物は無かった。だが、いずれ必ず見つける」
最初のコメントを投稿しよう!