第一章

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 奥の間から姿を現す少女――ヒマリがこちらを覗いて尋ねてくる。 「大丈夫だ。ちゃんと倒した術士の証明を貰ってある。倒した術士の分は、情報屋の契約によって金額と共に補充されている」  クシビの言葉に、豪華絢爛な着物に身を包んでいるヒマリは、いかにもな口調で契約内容を確認していた。長く整った髪が蝋燭の明かりに照らされて揺らぐ。 「ふうむ。流石は情報屋じゃのう。支払いもバッチリじゃ。お主の手柄も、なかなかに良いぞ」 「それはどうも……」  白々しい言葉に対し、無表情で返事をするクシビ。 「うむ。これからも精進するが良いぞ。さて、これからの任務も色々控えておるが、まずは休むがよかろう」 「そうさせてもらう……」  クシビが返事をすると、そのまま部屋を後にするのだった。 「クシビ様、お疲れさまでございます。治癒薬の用意ができております。こちらへどうぞ」  クシビが息を吐いた。  複数の蝋燭が灯された部屋に居座っているヒマリは――そのままクシビを見送っていた。 「また旧友とやらに会ったのか?」 「………。」  クシビは、その言葉に何も返さない。 「まあ、気にせず任務を続けてくれれば良いがな。それで、手掛かりはなかったのか?」 「あまりめぼしい物は無かった。だが、いずれ必ず見つける」     
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