3人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
すると、あっさりとその場を通り抜ける事ができた。
自分は指名手配をされているが、今は変装魔術と偽装物などにより、普通にこうして街の中を移動できている。
そこを通り抜けると、クシビは工場区エリアの一角へたどり着く。ビルや建造物の立ち並ぶ都心部とは違い、工場や煙突の立ち並ぶ区域だった。
都市を覆う巨大バリケードを通り抜け、外周区との境目にある区域だ。
工場区域であるこの場所では、黒々とした煙があちこちから立ち上っていた。その工場の全てが荒々しい造りで、発展した都市部とはまるで違っている。
その工場区をさらに移動していき、クシビが工業場の一角で立ち止ると、目の前に一人の男に話しかける。
「リョク、様子はどうなってる?」
「クシビか?」
その声に気づいた男――オオカ・リョクが振り返る。背丈が高く、温和な笑みを浮かべている。
「少しばかり異変種の発生は減ってきている。だが、収まりそうな気配はないな……。」
「そうか……」
リョクの報告に、歯がゆい思いが胸に沸くクシビ。
「そっちはどうだ? 何か手がかりは掴めたか?」
「すまない、まだ……」
「謝ることはない……。お前のおかげでここの異変種の駆除が出来ているんだ。今は、それだけでも十分さ」
最初のコメントを投稿しよう!