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暗く、狭い路地の一角にある店。それは、警護術士隊の見張りから逃れる結界の中にあった。都市部の中でも、あまり人通りのない場所にそれはあった。
クシビが、隠れ家へと帰る。
「ほう、お主の顔見知りが見張りに来ておるか……。しかし、こちらを見張っておるというわけでもなさそうじゃのう……。まあ、この程度なら見逃しておいてもよいじゃろう」
「そうか……」
クシビが短く返事をした。次の任務の為に、下準備を整えていく。銃の整備や魔術道具を確認する。
「ふっ。しかし、勇敢なことよな。英装術士の活動範囲外の場所だと言うに、ここまで手を回すとは……。よっぽど住民が心配なのじゃろうな」
「………。」
その言葉にクシビは黙ったまま考えていた。
ヒマリは含みのある笑みを浮かべ、チラリとクシビを見やる。
「やはり街の英雄じゃのう。その活躍ぶりも英装術士ならではじゃな」
英装術士は街の英雄だ。その活躍ぶりも、この都市が長年の繁栄と発展を築いてきた理由でもある。
王国として栄えてきた時代から、その存在は変わっていない。
「よいのか? お主の旧友なのであろう? このまま任務を続けていれば、剣を交える事になるやもしれぬぞ?」
その言葉に、クシビは表情を変えないままだった。
「予定に変更はない。このまま工場区付近の調査は続ける」
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