第一章

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「はあ、はあ……」  クシビが呼吸を整える。魔力は使い果していないが、もう少しで底を付きそうだった。  目の前には、男達が全員倒れ伏している。 「……これで終わりか」  安堵して銃を下ろす。バラバラになった武器や機材があちこちに散らばっている。  息を吐くと、クシビは端末に向けて魔力を込める。こんな違法術士でも、ある程度の報酬は払われるはずなのだが……。  そんな事をしていると、何やら不穏な物音が聞こえてくる。聞きなれた物音。耳に残るほど、何度も聞いた音だ。 『そこの術士! 武器を捨てろ!』 「………」  案の定、国下英装術士兵団だった。  国に選定され、その下に集められた治安維持を目的とした術士の兵団。  術士の中でも、優秀な者にしかなる事のできない兵団で、武装や魔術も一級品の物を持っている。政府の傘下である警護術士隊と共に、大規模な人数で形成されている。  そして、その中からとある人物が姿を現す。 「見つけたわよ……クシビ」  そう言って睨み付けてきたのは、英装の隊員服を纏った一人の女性だった。   クシビは表情を俯かせる。見知った顔であり、昔からの知人、友人でもある彼女――サキノジ・アヤメが、目の前に立ちはだかっている。     
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