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例えどれだけ恐ろしい違法術士だろうが真っ向から立ち向かう事を覚悟をした表情。
まるで悪を挫く勇者のようだ。整った顔立ちが正義に満ちている。
首まで伸びた髪を揺らして、輝くように堂々と剣を構える。
「今日こそ、あなたを捕まえるわ……!」
「………」
そのセリフは何度目だろうか。
「大人しくしなさい! もう逃げ場はないわ!」
威勢のいい警告と共に剣が向けられる。しかしクシビは、その言葉を聞かなかった事にする。このままでは埒が明かない。
「さあ、早く武器を捨てて!」
「悪いが、もう用は済んだ」
そう言い残すと、すばやくクシビは走り出した。
「ま、待ちなさいっ!」
路地裏へと向かったクシビを追い掛けるが、次の瞬間、魔力による強烈な発光が起こる。
「っ――!」
隊員達が一瞬目を晦ませるが、すぐにその後を追い掛ける。だが、路地裏へ駆けこんだ時には、そこに人影はなかった。
「また………」
そんな言葉を漏らすアヤメ。こうして話をはぐらかされて、何も答えずに去っていくのは何度目だろうか……。
「ダメだ。姿を見失った。魔力痕跡も見つからない……。いったいどうやって姿を隠しているんだ」
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